小幡:霧の朝、ヴァンネス・アベニュー、サンフランシスコ
作家:小圃千浦(1885-1975)
タイトル:霧の朝、ヴァン・ネス・アベニュー、サンフランシスコ
制作年:1930年 サイズ:32 x 49.1 cm
有名なサンフランシスコのこの通りの見慣れた風景が、幻想的な銀色の霧に包まれています。木々や建物の輪郭だけがぼんやりと見え、霧が色彩を覆い隠しています。蜃気楼のような効果をさらに高めているのは、遠くに馬が引く荷馬車が一台だけ近づいているように見える点で、車の姿はありません。左側には、かつてヴァン・ネスとオファレルの角にあった聖メアリー大聖堂の尖塔の輪郭が見えるようです。ここに描かれている伝統的な建物は1890年代に建てられ、1962年の火災で焼失しました。その後、1971年に教区によってゴフとギアリーの交差点に、地元の人々が「メイタグの攪拌機」と例えた現代的なデザインの新しい大聖堂が建設されました。この画期的な全25点のシリーズの中で、都市風景を描いたのは本作を含めて2点のみで、他の多くは「大自然」の景観に焦点を当てています。
本作は「世界風景」シリーズより。小圃が全財産を投じ、最高水準で制作した画期的な試みです。このシリーズで小圃は、水彩画の効果を木版画で再現するという、前例のない挑戦を行いました。また、本作のように木版で表現するのが極めて困難と思われる場面も多く選ばれています。シリーズに付属した高見澤発行の英語冊子によれば、この作品は90回の摺りを要したとのことです。この例では、画面全体にきらめく雲母を施すための刷毛目も確認できます。本作の一例は、近年ホイットニー美術館に収蔵されました。
画面右下に作家の署名と印があり、このシリーズでは非常に珍しい特徴です。
発行:高見澤
署名:右下隅に墨書署名および朱印
コンディション:摺り・色ともに極めて良好。状態良好。美術館での長年の経験を持つ修復専門家によって丁寧に保存処理が施されており、マージン部分にその痕跡が見られます。未額装。
参考文献:ホイットニー美術館オンライン(収蔵番号2015.11)参照。サンフランシスコ美術館アッヘンバッハ財団も参照。
SKU: OBA151