高橋弘明(松亭): 隅田川岸の夜(売約済み)
作家:高橋弘明(昇亭)弘明(1871-1945)
タイトル:隅田川岸の夜 制作年:1907年
隅田川に係留された昔ながらの木造船を描いた、この一見地味な雪景色は、新版画の歴史において重要な作品です。これは弘明が渡辺庄三郎のために制作した最初の版画であり、大変な成功を収め、明治時代のうちに渡辺版画株式会社の設立に寄与しました。渡辺はそれまで江戸時代の有名な版画の復刻版のみを出版していましたが、1907年に「新作版画(しんさくはんが)」という新ジャンルの版画を始めることを決意しました。渡辺は当時22歳でしたが、京橋に「松美堂」という独立店を開き、最初のデザインに高橋昇亭を起用していました。清水久雄が「Water and Shadow」の中で渡辺について書いたエッセイによれば、これら最初の版画は「抑制された色調と繊細な線で高められた洗練された写実性が特徴」とされています。この作品を含む初期の作品群は非常に成功し、地震前に弘明は渡辺のためにほぼ500点のデザインを制作しました。この重要な地震前のデザインは、特にこの状態で非常に希少です。
状態:印刷、色彩、保存状態ともに優良。裏面にごくわずかな貼り跡あり。寸法:短冊形(13.5 x 36.7 cm)。
出版社:渡辺庄三郎
参考文献:大田区民俗資料館の挿入資料。「Water and Shadow」内、清水久雄の論文「出版社渡辺庄三郎と新版画の誕生」23ページ、図4にて解説。
SKU: HIC118K